台北で見つけた“昔ながらの温泉時間”──北投「瀧乃湯」で心まで温まるひととき
台湾の温泉地といえば、真っ先に名前が挙がるのが「北投(ベイトウ)」
台北市内からMRTでわずか30分ほど、手軽にアクセスできる温泉地として観光客にも地元の人にも愛されています
そんな北投の中でも、ひときわ“ローカルな温泉文化”を感じられる場所があります
それが、「瀧乃湯(たきのゆ/Longnice Hot Spring)」
北投温泉の源泉のひとつであり、100年以上の歴史を持つ老舗公共浴場
豪華なスパやホテルとは違う素朴で心温まる“裸のつきあい”が体験できる場所です
今回は、そんな瀧乃湯をテーマに、台湾の人々の暮らしに溶け込む“癒しの温泉時間”をご紹介します
北投の温泉文化の原点にあたる「瀧乃湯」
北投温泉は、日本統治時代(1890年代)に日本人技師によって開発された温泉地
その中心にあったのが当時から営業していた「瀧乃湯」です
足湯
木造の建物に赤い屋根。外観はどこか懐かしく、昭和の銭湯のような雰囲気
入り口の暖簾をくぐると、ほのかに硫黄の香りが漂い、“ああ、温泉に来たんだな”と心がほっとする瞬間が訪れます
地元の人にとっては「子どもの頃から通っている銭湯」のような存在で、今でも休日には常連さんが洗面器を片手に通う姿が見られます
観光地化されていない、昔ながらの北投温泉の姿を今に残す場所で、それが「瀧乃湯」の最大の魅力です
源泉かけ流しの白硫泉
瀧乃湯の湯は、北投温泉特有の「白硫泉(はくりゅうせん)」と呼ばれる泉質
乳白色ににごった湯は、北投石という希少な鉱石を含んでおり、世界でも台湾の北投と日本の秋田・玉川温泉でしか見られない貴重な温泉です
泉質はやや酸性で、肌に触れるとスベスベ。入った瞬間にふわっと身体を包み込み、まるで温泉そのものが“やさしく抱きしめてくれる”ような感覚
湯船の底からは絶えず源泉が湧き出しており、加水・加熱なしの完全なかけ流し天然温泉
硫黄の香りがやさしく漂い、心身ともにリセットされていくようです
湯温は約42〜44度とやや熱め。
最初はピリッと感じますが、慣れると全身の疲れが溶け出すような心地よさ
地元の常連さんたちは「10分入って5分休む」を繰り返しながら、じっくり温泉と対話しているようです
地熱谷
シンプルだからこそ!心地いい
「瀧乃湯」は、今も昔も変わらずシンプルなスタイル
男女別の大浴場のみで内風呂がひとつ。サウナや露天風呂はありません。しかし、その潔さこそが魅力
木の桶で身体を洗い、湯船に浸かる
余計なものは何もないけれど必要なものはすべて揃っている
その素朴な雰囲気がかえって心を落ち着かせてくれます
浴場の壁には「長く入りすぎないように」「石けんを湯船に入れないで」などの注意書き
どれも温泉を大切に使い続けてきた地元の人々の思いが感じられます
観光客として訪れても、どこか“地元に帰ってきたような安心感”がある――
そんな温かさが「瀧乃湯」にはあります
利用(使い方)のコツ(旅人向けガイド)
初めて訪れる人でも安心して楽しめるよう簡単に利用の流れをご紹介します
- 料金と営業時間
入浴料は大人一人150元前後(約750円)。
券売機でチケットを購入し、受付で渡して入場します。
営業時間は朝6:30〜21:00
朝風呂や夜風呂として地元の人は出勤前にひと風呂浴びることもあります
- 入浴のマナー
- タオル・石けんなどは持参(販売もあり)
- 全身を洗ってから湯船に入る
- 写真撮影は禁止
- 水着不可(完全な裸入浴)
地元の人が多い場所なので静かに入浴するのがマナーです
もし迷ったら、周囲の人の動きをそっと真似すれば宜しいでしょう
北投温泉親水公園露天温泉
お風呂上がりは“北投散歩”へ
瀧乃湯を出たあとにおすすめなのが、北投公園エリアの散策
すぐ隣には「北投温泉博物館」、少し歩けば「新北投図書館」や「地熱谷(Hell Valley)」もあり
温泉に浸かったあとに、湯けむりの立つ緑の中をゆっくり歩くことができます
それだけで、心身がふわっと軽くなるような気持ちになります。
また、瀧乃湯の周辺には昔ながらの食堂も多く
湯上がりにおすすめなのは「滷肉飯(ルーローファン)」や「牛肉麺」
温泉の後に食べる台湾ごはんは、いつもより美味しく感じます
浄手鉱泉湯(手湯)
知る人ぞ知る「北投の心」
北投の温泉街には、ホテル併設のスパや貸切風呂も多いですが、「瀧乃湯」はそれらとはまったく違う存在
ここには、台湾の人たちの“日常の温泉文化”があります
観光客向けでは無いぶん、外国人が訪れると少し珍しがられるかもしれません
でも、「こんにちは」「お先にどうぞ」といった小さな交流が生まれるのも、この場所の魅力
台湾の人の優しさと昔ながらの温泉文化が同居する場所、それが、瀧乃湯です。
女巫石瀑
【基本情報】
名 称:瀧乃湯
所在地 : 台北市北投区光明路244号
アクセス: MRT淡水信義線「新北投駅」から徒歩約3分
営業時間:6:30〜21:00(最終受付20:00)
定休日:月1回の清掃日(現地掲示で確認)
料金:大人150元前後(子ども100元)
TEL : +886 2 2891 2236
※設備が非常にシンプルなため、タオル・石けんなどは持参がおすすめ。
※更衣室・ロッカー・シャワー完備(ドライヤーはなし)。
詳細URL(公式HP):http://www.longnice.com.tw/
↓MAP
静かな湯けむりの向こうに、台湾の素顔
「瀧乃湯」は、派手さも贅沢さもないけれど、そこには“台湾でも温泉の良さ”があります
湯けむりの中で聞こえるおばあちゃんたちの笑い声、桶の音、湯の流れる音
どれもが北投という街の日常の風景であり旅人にとっては忘れられない思い出になります
観光の合間に少し足を止めて、ゆっくりお湯に身をゆだねてみてください
熱い湯に包まれたあと、外に出て感じる北投の風が驚くほどやさしく感じられるはずです
心も身体も温まる台湾らしい癒しの時間
それが瀧乃湯で過ごす、静かな午後のひとときです


